深夜2時16分の暗闇と渇き
暗闇の中で目を醒ますと、無意識の内にデジタル時計の青白い数字を捉える。
2時16分
ベッドに潜り込んでから1時間と少し。
起床時間を考えると、思わず舌打ちをしてしまう。再び目を閉じてみても、眠気が訪れる気配は一向になかった。
寝返りをうって壁を見つめる。いつもの姿勢とは反対向きだ。上掛けを脚で挟んでみても、なにも変わりはしなかった。
そんな中、僕はふと、強烈な喉の渇きを覚える。
――ビールが飲みたい。
寝付きが悪い時に飲むアルコールを、ナイトキャップとか言ったような気がする。
僕はベッドから這い出ると、暗い部屋の中を、僅かに漏れ入る外の灯りを頼りに冷蔵庫へと向かった。
そして、冷蔵庫の扉をゆっくりと引き開けると、暗闇に慣れきっていた僕の視界は一気に白んだ。
目を細めながら冷蔵室を確認すると、戻ってきた視界の先には、いくつかのアジア系調味料の瓶が並んでいるだけだった。そこには、ビールなんて物はなかった。
あったのは、ガス入りのクリスタルガイザーの青く澄んだペットボトル。
扉内側のポケットに一本だけ。
僕は落胆しながらもペットボトルを手に取ると、青いキャップをくいっと捻った。
――プシュッ
閉じ込められていたミネラルウォーターの時間が再び動き出し、細かい泡のつぶが出口を目がけて登っていく。
その様子をしばらく眺めてから、僕は一気にペットボトルを呷った。
喉を上下させる度に、泡の刺激が身体の中心を目がけて駆け下りていく。眠れずに燻っていた不快感が一瞬で押し流されて、そして僕の中へ消えていった。
気が付けば、僕は一息にボトルの3分の1を飲み干していた。
これは十分、ビールの代わりになる。いや、舌に甘さの嫌味を残していかない分だけ、ビールよりも爽快な気分になれる。
もうふた口だけ飲み下すと、僕はキャップをきつく締めて、冷蔵庫へとペットボトルを戻した。
そしてベッドへ向かいながら思った。
朝になったら、ガスは抜けてしまい、かったるくなるのだろうと。