もか・ざ・ぶらっく

検証用です

そこで香るはカラフル・ミント

 

「欧米では数万円かかる歯のメンテナンスを、健康保険で受けることができるんです、日本という国は。これは世界的にみても稀有なことなんですよ」

 普段は事務的な印象を受けるその歯科女医が、めずらしく熱を込めてそう言っていたことを思い出す。

 

 僕は洗面台の鏡に向かって口を開けていた。手にはDENT . e-floss。

 

 幸運なことに子供の頃から歯だけは丈夫だった。学校の歯科検診では、歯並びと虫歯がないことをいつも褒められた。自分が偉いわけでもないのに、そんな言葉で浮かれていたのだから子供というやつはおめでたい。しかし、おかげで20年ちかく歯医者に行くことはなかった。

 それがある時、歯の裏側が崩れ落ちた。

 最初は歯が欠けたのかと思ったのだが、何のことはない。歯石が剥がれ落ちただけだった。

 あまりに歯医者にかかることがなかったため、僕は自分の歯の状態をまったく知らなかったのだ。それが歯石だということも、しばらくはわからなかったほどだ。

 あらためて自分の口腔内を鏡で見てみると、歯の裏側は長年に渡る喫煙の習慣により、ヤニで茶色く変色していた。あまりの酷さに、もはやどこからが歯石で、どこからが自分の歯なのかはわからなくなっていた。

 

 僕は小学校以来ぶりに歯医者に行くことにした。

 

 僕の歯は、あっという間に白さを取り戻し、歯茎は健康な桃色をあらわした。

 そこで最初の女医の発言になる。

 施術中に彼女はよく喋ったのだが、その多くが営業用のこなれたトークスクリプトで、彼女の優秀さを際立たせるだけのもだった。

 しかし、その一節だけは違った。きっと彼女の真実だったのだろう。

 その言葉には、血肉を持った彼女を感じることができた。

 だから、僕は彼女のすすめに従い、いままでになかった習慣を自分の生活に取り入れることにした。

 デンタルフロスを使うという習慣だ。

 僕は、デンタルフロスという物は、歯並びの悪い人が使うものだと勝手に思い込んでいたのだが、そうではなかった。むしろ、隙間がないぐらいにキッチリ歯が並んでいる人間の方が必要なものだった。

 使ってみると、そのフロスにはワックスがコーティングされており、歯の間に抵抗なくスムーズに入り込んだ。そして唾液に触れると、その水分で倍以上にフロスは膨らみ、ぴたりと歯の側面にフィットした。

 そんなフロスを小刻みに動かせば、ブラッシングで除去しきれていなかった細部の歯垢すらも、完全に取り去ってくれる。

 こんな優れた物を今まで使っていなかったとは、勿体ないことをしたものだ。僕は素直にそう感心した。

 それ以降、僕は女医の指導どおりに、オーラルケアに励むようになった。 

 後で知ったことだが、彼女が処方してくれたフロス。DENT . e-flossは普通の薬局では販売していなかった。

 一度、市販品を使ってみたが、同じような経験を得ることはできなかった。

 やはり、これでないと僕にはダメだった。

 今は、定期検診でリコールされた時に歯科医院で購入するか、ネットで購入するか、そのどちらかだった。

 

 鏡に映った僕が、カラフルな容器からフロスを引き出す様子を眺めながら、僕はなぜこの優れたフロスが一般的な薬局で取り扱っていないのだろうかと思案する。

 そのまま歯の間にフロスを当てると、ミントの爽やかな香りが口中に広がった。

 

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ライオン DENT . e-floss デントイーフロス 6個入

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